学名とは?ウミウシの学名あるあるについて解説!【明日から使える豆知識】

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この記事では、そもそも学名って何?ということと、ウミウシの学名についてよくある豆知識を紹介します。

学名についての基礎知識があることで、ウミウシの名前の由来や成り立ちについてより興味が出るようになると思います。

いろいろ調べて学んだことを、自分自身の備忘録もかねて書くので、この記事が誰かの役に立てたなら幸いです。

学名とは?

学名とは、スウェーデンの生物学者、カール・フォン・リンネさんが「それぞれの生き物にわかりやすいように世界共通の名前をつけましょう」と考えだしたルールに基づいた名前のことです。

具体的にいうと、それぞれの生物に属名(ぞくめい)と種小名(しゅしょうめい)をつけることで、その種固有の世界共通の名前をつけたことになります。
人間でいう姓と名のようなものですね。

そうすることで、日本でもアメリカでもアフリカでもヨーロッパでも世界中どこでも共通の認識が持てるようになります。

今回はウミウシを例に、学名についてより詳しく解説していきます。

学名とルールについて

コールマンウミウシ Chromodoris colemani Rudman, 1982_奄美大島
コールマンウミウシ Chromodoris colemani Rudman, 1982

コールマンウミウシを例にとると、
属名=Chromodoris
種小名=colemani

になります。
人間でいうChromodoris(佐藤)、colemani(たける)のような名前のつけ方と考えるとイメージがつきやすいのではないでしょうか。

ちなみに名前の後ろについている、 Rudman,1982 については、1982年にRudmanという方が記載したということになります。

ここで、「記載したって何?」となるのですが、ざっくりいうと「博士が論文書いて、書いた論文が正式に記載されたから名前ついたよ」ということになります。

そうすると今度は、「正式に記載されたって何?」となるのですが、

・博士だったりその仲間や資格を持っている人と協力して論文を書く(日本語か英語)
・論文が生物学会で発表されたり、学術誌に記載される
WoRMSに記載されたものを大体の人が現段階での学名として認識する

というざっくりな流れになるのではないかと思います。(著者は学者ではないので間違っていても悪しからず)

「博士って誰?どんな人?」「学術誌とは具体的に?」「WoRMSって何?」とか疑問は尽きないですが、それについては本題から逸れるので一旦おいておきます。

こうして、1982年にRudmanという人によって、このウミウシはChromodoris colemani という世界共通の名前が決まりました!
おめでとう!という感じです。

さらにちなみに、学名を記載する際は、 以下のような記載ルールもありますが、それも一旦おいておきます。
<記載例>
Chromodoris colemani Rudman,1982
・学名である属名と種小名の部分は斜体で書く
・属名の一文字目は大文字
・記載者と記載年については斜体で書かず、その間にカンマを入れる。

学名の読み方について

学名は基本的に、ラテン語で表記されるようになっているので、日本人にとってはローマ字読みをするのがわかりやすいです。

Chromodoris= クロモドーリス
Colemani=コールマンイ

「え?ローマ字読みならコールマニじゃないの?」という理屈についてはのちほど説明します。

基本はローマ字読みで通じますが、独特のルールがあるので完全なローマ字読みでは通じないようです。
・「j」は「y」に置き換える
・「c」「ch」「qu」は「k」に置き換える
・場合よっては「v」を「w」に置き換える

ウミウシの学名あるある

ここでは、ただローマ字読みするだけでなく、読み方にも独特のルールがあるんだよというのを解説します。
これから解説するルールを知ることで、学名を知るのがより楽しくなるでしょう。

種小名の最後が i の場合は男性に献名という意味

今回紹介した、コールマンウミウシを例にすると、
Chromodoris colemani → coleman +i (クロモドーリス コールマンイ)という読み方になります。

これはルールのようなものなので、「i」が種小名の最後についたら、「colemanという男性に献名された名前なんだな」という理解をしてもらえればOKです。

大体、論文を記載した本人ではなく、論文記載にあたって協力してくれた別の誰かに協力してくれてありがとうってお礼の意味も込めてつけられているんだろうな〜とに認識してます。(違ってたらごめんなさい)

種小名の最後が ae か e の場合は女性に献名という意味

違うウミウシを例にとってみましょう。

ウテンミノウミウシ Baeolidia rieae
ウテンミノウミウシ Baeolidia rieae Carmona, Pola, Gosliner & Cervera, 2014

ウテンミノウミウシという、奄美大島の宇天ビーチが由来の和名がついているウミウシ。
Baeolidia=バエオリディア属
rie ae = リエアエ rie さんという女性に献名 という意味になります。

rieとは、「日本のウミウシ」などの著者でもある、ウミウシ博士 中野理枝さんのこと。

このようにして学名を見ていくと、いろんなウミウシの名前に人の名前がついていることがわかります。
主に研究協力してくれた博士の名前が多いように思います。

種小名の最後が ensis や icus の場合は縁のある土地名という意味

コンシボリガイ Micromelo guamensis_奄美大島_ウミウシ
コンシボリガイ Micromelo guamensis (Quoy and Gaimard, 1825)

例えばコンシボリガイ。
Micromelo属(ミクロメロ属)のguamensisとなるが、
guam + ensis (グアムエンシス) = グアムにゆかりのあるウミウシ

という解釈ができます。

ゆかりのあるというのは、その生物が発見された場所であったり、標本となる個体が採取された場所であったりします。

チゴミノウミウシ_奄美大島
チゴミノウミウシ Favorinus japonicus Baba, 1949

チゴミノウミウシには、japonicusという種小名がついています。

japon(日本)+ icus で日本のどこかから発見されたり標本となる個体が採取されたのだろうと考えられるわけですね。

実際に、そうなのかどうかは、そのウミウシごとに記載論文と呼ばれる「このウミウシは〇〇ウミウシです!」と書かれた論文を読むことで、より明確になりますので、より深く知りたい方は1本1本論文読みましょう、、、

記載者名と年が()で囲まれている場合は属名の変更があったという意味

キベリアカイロウミウシ Mexichromis pusilla (Bergh, 1874)_奄美大島
キベリアカイロウミウシ Mexichromis pusilla (Bergh, 1874)

キベリアカイロのように、 (Bergh,1874)とある場合は、「Berghさんが1874年に記載したんだけど、それから色々研究進んで今は属名が変わったよ!」という意味になります。

WoRMSでウミウシ名を調べる
みんな大好きWoRMSでウミウシ名を調べた結果

先ほど紹介した、WoRMS(ここの情報が”現時点では正確”だと思っている)で、キベリアカイロウミウシの学名で調べてみました。

Original nameのところがChromodorisになっていますので、記載された当初はChromodoris→現在はMexichromisだね!ということになります。

ウミウシ界では、「昨日まで佐藤くん(さん)だったけど、今日から竹下くん(さん)ね!」ということが研究が進むにつれてよく起こります。

この辺の変遷を知りたい方は、知りたいウミウシの記載論文を1本1本読むことで、、、以下省略。

sp. は種小名がまだない未記載種の意味

アマミウミコチョウ Gastropteron sp. 1 _奄美大島
アマミウミコチョウ Gastropteron sp. 1

奄美大島といえばアマミウミコチョウ!ご当地ウミウシ代表のこのウミウシ、なんと学名がまだありません、、、

Gastropteron属の1種という扱いになり、「佐藤さんってところまではわかってるんだけど、そのあとの研究がまだ進んでない」
のような感じです。

どうやら日本にはこの未記載種と呼ばれる、学名がついていない種がたくさんいるようで、ロマンたっぷりなウミウシの世界なわけですが、一体いつになったら名前がつくのかは、研究者のみぞ知るというやつでしょうか。

フジエラミノウシ属の1種91 とかなってくると、もうわけがわからなくなってきますね。

このsp.というのは、species(スピーシーズ)の略で、種という意味。

図鑑や書籍によって、「この未記載種のウミウシはsp.1、このウミウシはsp.2、、、」というふうに発刊された年月の捉え方で順番が違うので、「〇〇という本ではsp.1になっている」という感じになります。

ウミウシの学名の意味を調べてみたら…

ここでは、和名(日本語の名前)と学名とで名前の解釈が違うパターンを紹介。
日本人がつける和名と、学名とイメージの違いを知るのもまたおもしろいです。

アカテンイロウミウシ
アカテンイロウミウシ Ardeadoris cruenta (Rudman, 1986)

奄美大島で春先から初夏にかけて観察できる人気のアカテンイロウミウシ。
種小名である cruenta は、「血まみれの」「血のような赤色の」という意味
一気にホラーになりました汗

ヒオドシユビウミウシ_奄美大島_ウミウシ
ヒオドシユビウミウシ Bornella anguilla Johnson, 1984

著者が大好きで出会ったら必ず写真を撮ってしまうヒオドシユビウミウシ。
つぶらな瞳がかわいらしいこのウミウシですが、種小名 anguilla = ウナギというラテン語の意味になります。
なんと水中で泳ぐウミウシ!なので、その姿を見ると納得!していただけるのではないかと思います。

おまけ 学名の意味を爆速で調べて教えてくれるChatGPTを活用しよう!

自己責任にはなりますが、「いちいち論文読んで調べる時間なんてない、でも意味は知りたいんだよなぁ、、」という方向けのおすすめの方法。

それはAI ChatGPTを使いましょう!

AI ChatGPTでウミウシの学名の意味を調べてみた
AI ChatGPTでウミウシの学名の意味を調べてみた


「〇〇(ウミウシの学名) の種小名の意味は?」と入力するだけです。

あら簡単!ということで、AIに任せられることは 任せて作業効率を高めましょう!

爆速で学名や種小名の由来を調べて教えてくれるので便利です。
(なお、合っているかどうかは精査が必要なので、さっと意味が知りたい人向け)

まとめ

ここまで解説しておいてなんですが、学名は英語読みだったりローマ字読みだったり、いろんな読み方があるのも事実です。

なので、ぶっちゃけ通じれば読み方はどうでもいい!と著者は思うわけですが、一応、知識として知っておくのは大事かなと思いますので、参考にされてみてください。

そして、今回の記事を読んでくださった皆様へ、「明日から使えるウミウシ豆知識!」ということで、
さも昔から知っていたかのように雑学好きな友人や知り合いに自信たっぷり(←ここ大事!)で話してみてください。

きっと「へぇ〜そうなんだぁ!」と感謝感激されること間違いないでしょう。

なお、「そんなの知ってるわ」等、冷めた目で見られた際など、その後については一切の責任を持ちませんので、せめて日々の学びの足しにしてもらえましたら幸いです。

ではまた。

参考:おきなわ図鑑

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